六冊目。
マーケットデザイン
著:川越 俊司 講談社
この本も投資関係としては予備知識の部類に入るものですが、面白そうなので借りてみることに。
ざっくりと内容
- 価格決定のメカニズムについて書かれた本
- ヤフーやeBayで採用されている二位価格オークションとは
- 安定したマッチングや効率的なマッチングについての解説
株式の世界で当たり前に導入されている板寄せ方式のマッチングシステムから興味を持ったので、横道に逸れるようですが勉強の一環として読みました。硬派な印象を持つ本ですが、最初の2章を除けば読み易い内容であると思います。(ただし、読み飛ばすと後の章の理解が深まらないので注意)
二位価格オークション
通常の競り上げオークション方式で落札者を決める際に1番目に高い金額を提示した者が落札するのだが、落札した際の支払い額は2番目に高い金額を提示した者の同額となる方式で、ヤフーオークションにも採用されている。この方式では一番有利なのは自分の希望金額を素直に入札することであるらしい。
解説を読んでいくと理解はできるものの、実際には競合相手が負けじと入札すると安く落とことができず、希望通りの価格内で落とせたとしても、「もっと安く落とせたかも」という感情が機会損失の念を押し付けてくるため、利得がありながらも腑に落ちない結果に終わることもある。
また、この二位価格オークションは参加者の厚みがなければ適正の価格がつかず、出品者は大損し、落札者は予想外の巨大な利益を得てしまう可能性もある。(流動性リスクと似てますね)
より適正な価格をつけたい場合は、相場より初期入札額を控えめにして入札件数を増やすことがオススメらしいですので、試してみるといいかもしれません。
私もオークションで物を売ったことがありますが、入札価格を低めに設定していると「もしかしたら安く落とせるかも?」と市場参加者たちがウォッチリストに入れるため、打診で入札する人がいたり、高値になると落札できないという不安からか入札競争が過熱して、相場より若干良い値段がつくこともありました。
現状のシステムでは、サクラによる価格吊り上げが行えるというデメリットもありますが、他の入札方式を採用したとしてもついて回る問題であるらしい。とはいえ適正価格を超えた(希望入札額を越えると損失である)と思ったら降りればいいので、非常によくできたシステムだと思います。
本書では組み合わせオークションやクローズド、採用する方式による有利な戦略、マッチング自体についての内容にも触れているため、書ききれませんが1冊で非常に密度が濃く読み物としてはとても面白いと思います。機会があれば是非読んでみてください。